2009年11月2日月曜日
おやすみプンプンがすごい
昨日、ゆうこりんのおすすめで「おやすみプンプン」というマンガを4巻まで買いました。浅野 いにおさんという漫画家が書いているのだが、それはそれはすごかった。岡崎京子以来の衝撃を受けた。
主人公のプンプンは小学五年生。かなりシャイなおとこのこ。河原のエロ本捜索とか、たくさんの友達と元気に小学生生活を謳歌している。お父さんはリストラされて無職。口うるさいお母さんと喧嘩が絶えない。でもプンプンはおとうさんが大好き。転校生の田中愛子ちゃんに一目惚れしたプンプン。ある朝起きるとお母さんが床に倒れていた。お父さんは「強盗が入った」と言うんだけど、警察がお父さんを連れていってしまった・・・
と、あらすじだけでは小学生の日常マンガのようですが、プンプンとその家族は筆ペンで描いたヒヨコで表現されているのが特殊なところ。他の登場人物は普通のまんがのキャラクターなのに。田中愛子ちゃんは普通にかわいい女の子だけど、手をつなぐときもプンプンは鳥のままなのでおとぎ話みたい。しかもプンプンは自分で言葉を発さず、ト書きで説明されるだけ。超シュール!!!脱構築!!猫が人間として描かれていた「綿の国星」とは逆のやり方で、普通に描いたら陳腐になってしまうマンガからリアリティを削ぎ取るために間抜けな絵面になっている(と思う)。
人生における悲劇というのは意外とバリエーションに欠ける。プンプンはすごくひねくれた子だし置かれている状況も悲惨だとは思うが、それでもプンプンに降り掛かる悲劇はゴシップ紙で見慣れたもので、ストーリーによって読み手にこれまでにない感情を与えるのは難しい。それがヒヨコ姿になることで、この作品が卓越したものになったんではと思いました。ひよこ化はいま欧米でシューティングゲームとかの主流になっているFPSと呼ばれる一人視点と同じ役割を果たしている気がする。小学生〜中学生や30代フリーターの心象風景ばっかりなのにすんごく面白いなんて普通だったらありえない。
わたくしはああ、人を好きになるってこんな感じだな、と感情を揺さぶられること多数で何度も死にました。おじさんの大人編も、ダーティな大人が超リアルに描かれてて刺さりまくり。ブラックジョークもきいていて笑えます。人を選ぶ事は確かですが、はまる方には心の奥底まで届くマンガなのではないでしょうか。
しかし「だってプンプンはあたしのことがずーーっとずーっと好きなんだもんね?ずーーっとずーーっとあたしの幸せだけを考えていてくれるんだもんね?」と迫る田中愛子ちゃんは、カワイイけど面倒臭くて怖いとぞくぞくさせられます。男の人はこういうものと向き合っているのか。すごいな。女に生まれてほんとうによかった。
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2 件のコメント:
浅野漫画は全部読んでいるです。短編集が秀逸ですな。プンプンは脱落しそうだよ・・・・
<越前氏
このまえ「ウシジマくん」に立ち向かえるのは越前氏だけ、とウワサしていたところです。プンプン、今後いったいどうなるんだ・・ 短編集読んでみます!
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