2008年1月24日木曜日

「Newest Great Directors」 Directors Breau所属 パトリック・ドーターズ


新世代のGREATな映像ディレクターを紹介する「Great Directors」(たぶん半年にいっぺんくらいしかやりません)。第一回は新iPod nanoのカラフルなダンスCMでおなじみのDirectors Breau所属パトリック・ドーターズ(Patrick Daughters)さんをご紹介~。

パトリックは1976年カリフォルニア・バークレー生まれ。NY大学で絵画を専攻、在学中に制作した3本のショートフィルムがシカゴやハンプトンなど数々の国際映画祭を受賞し、国際的に注目されるようになった。ミュージックビデオ(以下MV)制作は2003年からと最近だが、Beck, the Yeah Yeah Yeahs, Kings of Leonなどカッティングエッジなアーティストと次々とコラボレーション。斬新なディレクションで音楽ファンにもその名を知られることになる。名前に聞き覚えがなくても、新iPod nanoのカラフルなダンスのCMといえば印象に残っている人も多いはず!

Feist - 1234Dir:Patrick Daughters
Uploaded by ListenToFeist

CMに使われている映像は、カナダの女性シンガーソングライターFeistの曲「1234」のMV。驚異の映像はほぼワンテイクで撮影されている。撮影監督はShawn Kim、振り付けはNY在住で建築とコラボレーションしたダンスなどの活動を行うアーティストNoemi LaFranceによるもの。撮影ではリモートクレーンカメラが使用され、360度回転など舞台裏がyoutubeで公開されているので要チェックだ。

Feist「1234」メイキング映像

パトリックのMVはユーモラスでオリジナリティに溢れているものが多い。彼は強烈な映像美をエゴイスティックに追求するというよりも、曲の持つ世界観を拡大し引き立たせるためにさまざまな手法を使って演出するのが特徴だ。特に「1234」に代表されるダンスシーンを使ったビデオは秀逸で、Kings of Leon「King Of The Rodeo」での華麗なナッシュビル・ラインダンスやファンタスティックなミュージカル仕立てのFeist「Mushaboom (version 2)」、ZuneのCM「Academy of Dreams :60」が素晴らしい。どれも画面全体が躍動するようなワクワク感を見る者に与えてくれる。

ZuneのCM「Academy of Dreams :60」

彼の特徴的な手法として、人物に映像を投射する方法がある。Bright Eyesの「Hot Knives」やLiarsの「Plaster Casts of Everything」 でその驚きの映像を見ることができる。特に「Plaster Casts of Everything」 では、車を運転する男の顔に彼が追いかける女の顔を投射。どっちが追われているのか見ている方も混乱してしまうというデビッド・リンチも真っ青の鬼気迫る作品。ファンタジーだけでなくバイオレンスな表現でも卓越した演出を見せ、懐の深さを伺わせる。

Liars「Plaster Casts of Everything」

ミュージックビデオではMTV、The Music Video Production Association (MVPA)、Design Awardsなど数々の賞にノミネートされたパトリック。最新作ではアンチ・ドラッグのショートフィルム"S.L.O.M."を監督した。現在は「エターナル・サンシャイン」や「サムサッカー」を手掛けたプロダクション「This Is That」のプロデューサーTed Hope、Anne Careyらとショートムービー制作プロジェクトを進めている。今後の活躍が楽しみな監督の一人だ。76年って同い年なんですよねえ。

■パトリック・ドーターズ(Patrick Daughters) プロフィール
1976年カリフォルニア・バークレー生まれ。ニューヨーク・ユニバーシティで絵画と映画を学び、2003年よりミュージックビデオやCMを制作。新iPod nanoのCM中で使われたFeist - "1 2 3 4"で脚光を浴びる。現在所属するThe Directors Bureau Webサイトで作品を見ることができる。

VideographyWikipediaより抜粋
* Yeah Yeah Yeahs - "Date with the Night" (April 2003)
* Yeah Yeah Yeahs - "Maps" (September 2003)
* Secret Machines - "Nowhere Again" (July 2004)
* Kings of Leon - "The Bucket" (September 2004)
* Kings of Leon - "4 Kicks" (December 2004)
* Death Cab for Cutie - "Title and Registration" (January 2005)
* The Futureheads - "Hounds of Love" (February 2005)
* Kings of Leon - "King of the Rodeo" (March 2005)
* Muse - "Stockholm Syndrome" (2005)
* Feist - "Mushaboom (version 2)" (September 2005)
* Yeah Yeah Yeahs - "Gold Lion" (February 2006)
* The Blood Brothers - "Laser Life" (October 2006)
* Secret Machines - "Lightning Blue Eyes" (2006)
* Secret Machines - "Nowhere Again" (2006)
* Albert Hammond, Jr. - "101" (November 2006)
* Snow Patrol - "Hands Open" (2006)
* Yeah Yeah Yeahs - "Turn Into" (2006)
* The Shins - "Phantom Limb" (January 2007)
* Bright Eyes - "Four Winds" (January 2007)
* Beck - "Nausea" (2007)
* Feist - "My Moon My Man" (March 2007)
* Feist - "1 2 3 4" (March 2007)
* Bright Eyes - "Hot Knives" (June 2007)
* Liars - "Plaster Casts of Everything" (July 2007)
* Interpol - "No I in Threesome" (August 2007)

文/齋藤あきこ(2008)

2 件のコメント:

saeco さんのコメント...

1234のPVはほんとに衝撃的でした。
私も思わず動画をひっぱってきて何回も観てました。
なんか、ポイントポイントでかっちり決めて、
それ以外はラフで素材の良さを引き出すって感じがします。

akiko saito さんのコメント...

saecoさん
Hi!こんにちは!ラフで素材の良さを引き出すってそんなかんじですね。すごいアイデアで驚かせるけど、コントロールフリークな感じがないのが新世代ですね〜