レイチェルははっきり言ってひどいウェイトレスだった。紅茶を頼むとカプチーノが来るし、コーヒーの種類も覚えられないし、運んでいる途中のドーナツを違うお客さんのパーカーのフードのなかに入れてしまったり。働き初めて二年半経っても、彼女はひどいウェイトレスのままだった。
業を煮やした店主のガンターは、彼女に教育を始めようとした。どこの棚にデカフェのコーヒー豆があるか、深煎りのコーヒー豆があるか、君はちゃんと知ってるかい?覚えたら、僕に報告するんだよ。
ガンターの口調はそれほどきついものではなかったが、それがレイチェルのなかで何かが切れるきっかけだった。彼女はガンターに食ってかかった。
「どうして私がひどいウェイトレスなのか知ってる?!どうでもいいからよ!興味がないの。デカフェがどうとか、モカがどうとか、一つも興味がないの」
そういえばレイチェルはファッションの仕事を志望していて、ウェイトレスはそれまでのつなぎだとは言っていたけど。あれから2年半、彼女は履歴書を書いたこともない。あっけにとられるガンターに、レイチェルは通告した。
「わたし、ウェイトレスやめるわ。」
そしてエプロンをカウンターに叩きつけて去って行った。
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