2008年3月16日日曜日

至福の映像体験 映画「潜水服は蝶の夢を見る」


ハイクオリティな予告編はこちら

「バスキア」、「夜になるまえに」で知られる映画作家ジュリアン・シュナーベルの新作「潜水服は蝶の夢を見る」。フランスELLEの編集長、ジャン=ドミニク・ボビーの物語。華やかなファッション業界で活躍し、仕事もプライベートも充実する働き盛りの彼が突然かかった難病「ロックインシンドローム」を描く。意識ははっきりしているのに全身が麻痺するこの病気、彼が動かせるのは左瞼だけ。右の瞼は麻痺のせいで縫い合わされてしまっている。普通なら絶望してしまう状況だが、彼は想像力の世界に救いを見出して映画タイトルと同名の自伝を左瞼の動きだけで見事に書きあげた。

この映画の素晴らしいところは、これだけヘビーなテーマを取り上げながら難病と闘うお涙ちょうだいの感動ストーリーではないところ。カメラは左目しか見えない彼の視点に完全になりきり、極端に浅い被写界深度のまま物語が進んでいく。すると見るものの注意はジャン=ドミニク・ボビーと同じ視点になり、自分ではコントロールできない病気という事実よりも自分の自由が利くイマジネーションの世界に向けられる。ほとんどぼやけた視界から見える緑のカーテン、赤い薔薇など世界がいかに美しいかに感動しきり。主人公が妄想する「素晴らしい体験」は、美女とワインと手づかみで食べる生牡蠣三昧ってところはいかにもフランス人!私なら寿司だな。撮影監督は「シンドラーのリスト」以降スピルバーグ作品の全てを手がけるヤヌス・カミンスキー。ものすごくクリアーな映像を撮るお方。


主演のマチュー・アマルリックは大好きな俳優なので、「愛する人が原型をとどめない形に…」という衝撃を存分に味わうことができてよかった(何言ってんだ)。いやーほんとに素晴らしい俳優です。マチューのインタビューはこちら

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