2013年4月7日日曜日

代案アーバス

夜中のファミレスはいいものだ。
人類の豊かさの到達点の一つだと思う。
タイムスリップしたらマヤ文明の人などに報告したい。

ところで先日夜中のファミレスでダイアン・アーバスの話になった。
その時に、2005年にV&Aでやった彼女の個展
「Diane Arbus, Revelations」の図録に書いてあった
ダイアン・アーバスの夢の話をした。
いい写真家はいい文章を書くねという話。

彼女は被写体の狂気に絡め取られて
そのまま向こうの世界に行ってしまったような人である。

あんだけすごい写真を撮る人が、日常的に
「わたしにはいい写真がとれない」
って苦悩してるのが衝撃だった。
以下当時書いたブログから転載

==========================

ビクトリア&アルバートで、写真家ダイアンアーバスの大回顧展(たしかヨーロッパで初)が行われているので行ってきました。

図録(ダイアンアーバス「リベレーション」)が非常にすばらしいので見てみて下さい。

その図録にも収録されているのですが、
彼女が見た夢のメモがありました。

彼女の撮った写真は時に目を背けたくなるくらい
生々しく痛々しく、強烈に神々しい。
「私たちはこんなに病んでいない」と、
彼女の撮った写真を非常に嫌う被写体もいたそうです。

彼女の見たのは、美しく燃え上がるホテルのなかで
写真が撮れない夢。
とても美しい文章で驚きました。
優れた写真家はみな文章が上手なのはなんでだろう。

夢の中で彼女は写真が撮れなくてものすごく焦っています。

最期は自らの命を絶ってしまった彼女ですが、
もしかして、彼女は常に強烈なものに圧倒されて写真が撮れない
ことに焦っていたのでしょうか?
だとしたら、さぞかし辛かったろうなと思います。

なんだか「知ってるつもり」みたいになってきました。
以下、彼女の文章を日本語に訳したつもりですが、たぶんかなり意訳です。


***************


私は燃え上がるホテルにいた。ものすごく大きくて、真っ白に飾られたゴージャスなホテル。

でも炎はすごくゆっくり燃えていたので、
まだみんなホテルの中に自由に出たり入ったりできた。
実際の炎は見えないのだけど、
煙が灯りのまわりに分厚くかかっていて、
それがほんとうにきれいだった。

私はすごく急いでいた。
そして、私は写真が撮りたかった。ものすごい写真が。

私は自分の部屋に行って、
どうしても助け出さなければいけないものを探したのだけど、
どこにあるのかわからなかった。
私のおばあちゃんも近くにいた。たぶん隣の部屋に。
どうしても助けなければいけないものが何なのか、
何を探しているのか私にはわからない。

ホテルはもうじき崩壊してしまう。

私は何をすればいい?

写真を撮るとしても、きっとフィルムすらない。
もしくはカメラがみつからない。
私はいつも妨害される。

誰もが忙しそうで、その辺をうろついていたけど、
それはすごくもの静かで
なんだかゆっくりだった。

エレベーターは金色だった。
まるで沈んでいくタイタニックのよう、、、

私は輝きに包まれていたけど、写真が撮れないことがすごく心配で、
とても混乱していた。

私の人生のすべてがそこにあった。

それはある種の平穏。でも、子どもを出産するときみたいに、
痛々しさがエクスタシーを妨害していた。

世話係が戻るようにあなたに頼む。彼らはまだ準備ができていないのだ。

私は輝きにほぼ圧倒されていたけれど、それ自身に妨害されてもいた。

天井にキューピッドが彫られていた。

たぶん私は写真が撮れないだろう。
もし私がカメラと私自身を助け出せるとしても。

たくさんの人がいたのに、
私はおかしなくらい一人ぼっちだった。
彼らはまだ姿を現さない。
誰も私にどうすればいいのか教えてくれない。

私は彼らを無視しないように心配していた。
もしくは私が考える何かを彼らにしたのではないかが心配だった。

それはスローモーションの非常事態だった。
私は台風の目の中にいた。

0 件のコメント: