moth

学校から家に帰ってトイレに駆け込んだ。用を足してドアを開けると、ドアの外に手のひらくらいはありそうな大きな蛾がいるのが見えた。「ぎゃああああああ！！！」思わず叫び声を上げ、ドアをすごい勢いでまた閉めた。僕は蛾が大ッキライで、見るだけで震え上がる。あの粉が気持ち悪いんだ。なんかフラフラ飛ぶし。

トイレから出れなくなった僕は、パパにメールをした。「蛾がトイレのドアの外にいる！！怖いからどっかにやって！！」。でも返事はない。さっきリビングにいたはずなのに。パパはいつも、高校生になっても蛾を怖がる僕をバカにしてる。もしかしたら意地悪してるのかもしれない。しょうがないから、またパパにメールをした。「お願いだからすぐに来て、もう泣きそうなんだ」。ほんとうに泣きそうだった。　...そしてようやく返事が来た。

「パパは死んだ。次はお前の番だ。愛をこめて。蛾より」